日記
【大規模地震に備えるBCP—全事業継続よりも中核事業にフォーカスする重要性】
近年、地震をはじめとする自然災害のリスクが高まる中、企業は事業継続性計画(BCP)の重要性を再認識する必要があります。特に、日本のように地震が頻発する地域では、大規模地震が発生した際にどのようにして事業を継続するかが重要な課題となります。しかし、すべての事業を継続させることは、理想的な反面、現実的ではない場合があるため、中核事業にフォーカスした計画の策定・運用が成功の鍵となります。
●全事業継続の難しさとリスク
多くの企業がBCPを策定する際、全事業の継続を目指そうとする傾向があります。これは理想的な取り組みではありますが、大規模な地震が発生した際には、設備やインフラ、人材に大きな被害が及び、全事業の継続を図ると、限られたリソースを分散させることになり、結果としてどの事業も十分に継続できないリスクが高まります。
また、全事業の継続を図ることは、計画の複雑化とコストの増大を招きます。地震後の混乱の中で、複数の事業を同時に再開しようとすることは、リソースの無駄遣いになる可能性が高く、最悪の場合、企業全体が破綻するリスクさえあります。
●中核事業にフォーカスする重要性
このようなリスクを回避するためには、全事業を一律に扱うのではなく、企業の存続に不可欠な中核事業にフォーカスすることが重要です。中核事業とは、企業の競争力を支える主要な製品やサービス、または最も利益を生み出す事業を指します。
中核事業を選定する際には、以下のポイントを考慮することが求められます:
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企業の存続に不可欠かどうか: 中核事業が停止すると、企業全体が存続の危機に瀕するかを判断します。
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顧客への影響: 中核事業の停止が主要顧客に与える影響を評価し、顧客との信頼関係が維持できるかを検討します。
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リソースの集中: 限られたリソースを最も効果的に活用できる事業に集中させ、迅速な復旧と継続を目指します。
●非被災地での事業継続の重要性
全国展開している企業にとって、被災地での事業復旧のみならず、非被災地での事業やサービスが停止しないようにすることも、BCPにおける重要なポイントです。大規模地震が発生した場合、被災地では通常の事業サービスの提供が必要とされないことも多く、限られたリソースを被災地に集中させるよりも、非被災地での業務を確実に継続させることが企業全体の持続可能性を高める鍵となります。
例えば、被災地からのサービス供給が一時的に困難になった場合でも、非被災地の拠点が通常どおり機能していることで、顧客に対する最低限のサービスを維持することが可能となります。また、非被災地での事業継続が企業の収益基盤を支えるため、全体の業績への影響を最小限に抑えることができます。
●中核事業の継続性を確保するための具体策
中核事業を特定した後は、その事業の継続性を確保するための具体的な対策を講じる必要があります。これには以下のような施策が含まれます:
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代替拠点の確保: 中核事業を迅速に再開できるよう、地震リスクの低い地域に代替拠点を用意しておくことが重要です。また、非被災地の拠点が通常どおり機能するよう、通信や物流インフラのバックアップ体制を整えておくことも求められます。
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サプライチェーンの強化: 中核事業に必要な資材や部品の供給が途絶えないよう、複数の供給ルートを確保することが求められます。非被災地の拠点が被災地からの供給に依存しないよう、予備の在庫を確保するなどの対策も必要です。
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従業員の教育と訓練: 地震発生時に適切に対応できるよう、従業員に対するBCP訓練を定期的に実施し、危機管理能力を向上させます。また、非被災地の従業員も、被災地の業務をサポートするための準備をしておくことが求められます。
●まとめ
大規模地震に備えるBCPでは、すべての事業を継続させることを目指すのではなく、企業の存続に不可欠な中核事業にフォーカスすることが重要です。さらに、全国展開している企業においては、非被災地での事業やサービスが停止しないようにすることも重要な要素です。被災地では通常の事業サービスの提供が必ずしも求められないことを踏まえ、非被災地の業務継続に注力することで、企業全体の持続可能性を高めることが可能となります。BCPの見直しや策定に際しては、中核事業の優先順位を明確にし、計画をシンプルかつ効果的にすることを目指しましょう。