日記

2024-09-20 07:23:00

【BCP策定・運用支援の失敗リスクと教訓】

事業会社でのBCP(事業継続計画)策定や運用は、リスク管理において不可欠な取り組みです。しかし、実際にはBCPがトップダウンで進められることが多く、現場が形だけ関与するか、またはほとんどついてこないケースもあります。また、経営層がBCPの重要性を認識している場合でも、現場にその実行を丸投げしてしまい、結果として計画が形骸化するリスクが生じます。

 

1. コンサルタントの役割と限界

先ずは、BCPコンサルタントの役割と限界を理解してもらう必要があります。BCPコンサルタントは、BCPに関して、策定方法、運用方法や他社の成功事例を提供できます。この知識は企業にとって有益ですが、コンサルタントが提供できるのはあくまで「手法」や「事例」に過ぎません。最終的な事業継続を保証するのは企業内部の取り組みであり、コンサルタントが直接それを担うことはできないのです。

以前、支援先のクライアントで事業インパクト分析・リスクアセスメントを実施中にリスク、課題が明確になってくると「コンサルタントとして事業継続を100%保証してくれ。そうじゃないならやる意味がない」と言われたことがあります。そういう発言に至った気持ちもすごく理解できます。ですが、BCPは事業を継続するための重要な手段ではあるものの、自然災害や予測不能な外部要因に対して外部のコンサルタントが100%の保証をすることは現実的に不可能です。最終的なリスク管理と対応の責任は企業自身にあるのです。

 

2. トップダウンアプローチの限界

BCPの策定・運用がトップダウンで進められることが多い理由の一つは、経営層がリスク管理に積極的に関与し、会社全体の方針を示す必要があるためです。しかし、このトップダウンアプローチが必ずしも成功するわけではありません。

  • 現場がついてこない: BCPが経営層から現場に押し付けられる形で進行すると、現場の従業員が計画に対して消極的な姿勢をとり、結果として形だけの関与に終わることがあります。現場の具体的な業務に結びついていない計画は、緊急時に実行されることが難しくなります。

  • 経営層による丸投げのリスク: 経営層がBCPの重要性を認識しつつも、計画の具体的な策定、運用を現場に丸投げするケースも見られます。このような場合、BCPは「形式的に策定されたものの、実際の運用は曖昧」という状況になりかねません。

 

3. 企業全体での主体的な取り組みの重要性

BCPの策定・運用を成功させるためには、企業全体が主体的に取り組む必要があります。トップダウンの指示だけではなく、現場からのボトムアップの意見を取り入れ、全社的な意識共有を行うことで、より効果的なBCPが実現します。以下のステップが特に重要です。

  • 経営層と現場の連携: BCPが単なる形式的な計画に終わらないようにするためには、経営層と現場の間で密接な連携が必要です。経営層がリーダーシップを発揮しつつ、現場の具体的なニーズや課題を反映した計画を策定することで、計画が実効性を持つようになります。

  • 現場での実践訓練: 現場の従業員がBCPに対して実際にどう対応すべきかを理解し、緊急時に適切に対応できるようにするためには、定期的な訓練やシミュレーションが欠かせません。これにより、現場レベルでの対応力が強化され、計画が実際に機能することが期待できます。

  • BCPの意識を全社員に浸透させる: 経営層がBCPの重要性を認識し、現場がそれに基づいて行動できるようにするためには、全社員に対してBCPの意識を浸透させる取り組みが必要です。全社的な教育や啓発活動を通じて、BCPが単なる「他人事」とならないようにすることが求められます。

 

最後に

私のコンサルタントとしての力量不足もあるかと思いますが、BCPの取り組みは現実感がないこともあり企業が主体的に動かない、動機付けがうまく行かない場合があります。

この時、個人的には、初期初動対応と事前対策の2つを可能な限り具体化・強化する支援に注力します。初期初動対応は、先ずは人命を守ることが最大の目的です。また、事前対策を強化することで人命、建屋、設備、情報システムの被害を最小限に抑えることができます。動機付けがうまく行かない場合でも、初期初動対応の内容を現場が理解し、事前対策を実行して備えることで、災害時の混乱を最小限に抑えることが可能だと信じています。