日記

2024-10-31 07:32:00

【設備投資におけるROI・NPV算出の誤解が招くリスク】

1. 設備投資のROI・NPVの基本的な考え方

企業が設備投資を行う際、投資がどの程度の収益性を持つかをROI(投資利益率)やNPV(正味現在価値)で算出し、意思決定の材料とすることが一般的です。これらの指標は、投資後のキャッシュフロー全体ではなく、増加した「増分キャッシュフロー」を基に評価するのが基本です。増分キャッシュフローとは、投資前のキャッシュフローと投資後のキャッシュフローの差額を指し、この差分が投資によって得られた純粋な追加価値を示します。

 

2. よくある誤解:投資後のキャッシュインをそのまま使用

先日、ある支援先(製造業)で、投資評価・判断資料を見せていただいた時に、ROIやNPVの算出において投資後のキャッシュイン全体をそのまま使用し、投資前のキャッシュインを差し引いていない点を発見しました。例えば、製造ライン設備の投資において、投資前のキャッシュインが年間100万円、投資後のキャッシュインが年間150万円の場合、50万円が増分キャッシュフローです。しかし、投資後の150万円全体をROIやNPVの計算に用いていたのです。

 

3. 誤算が生むリスクと意思決定への影響

増分キャッシュフローを考慮しないと、実際の投資収益性が過剰に見積もられ、不正確な投資判断が行われるリスクが高まります。特に以下のようなケースで誤解が生じやすいです。

  • 設備投資のROI向上を急ぐプレッシャーが大きい場合
  • 計算手法や評価基準に対する理解が浅い場合
  • 既存の投資評価フォーマットをチェックせずに使い続けている場合

結果として、誤った前提に基づいて投資判断が行われ、思ったような収益を上げられない可能性が高まります。

 

4. 正確な算出方法の普及とプロセスの強化が鍵

このような誤解を防ぐためには、ROIやNPVの算出方法の基本的な理解と共に、増分キャッシュフローの概念を社内で明確にし、評価プロセスの段階でチェック体制を導入することが重要です。こうした取り組みを通じて、設備投資のROIやNPVが投資の実際の価値を正確に反映するようにすることが、企業の健全な成長に繋がるでしょう。

ROI・NPVを正確に理解し、活用することが、経営資源を有効に使い、価値ある投資判断を行うための基本です。

なお、投資評価・判断は、ROI、NPVといった定量効果だけでなく、定性効果と合わせて総合的な判断が必要な場合もあります。